住宅ローンで借りてその後賃貸物件にした話

落とし穴

そもそも住宅ローンを借りて投資物件を買ってはいけない

大前提として、住宅ローンであろうと、消費者ローンであろうと
金銭消費貸借契約において資金使途が限定されている以上は、
貸し手が認めていない資金使途に使ってはいけません。

銀行が住宅ローンを貸すという意味を考える必要があります。
人は誰もが住む場所を必要とします。
居住スペースを確保するためにその人の収入に応じて支出できる金額は決まっているので、その範囲内であれば、長期の借入をさせてあげましょうという話。

そもそも給料とは「生活に必要なコスト(=労働力の回復コスト)を払ってくれるもの」ですから、労働力の回復コストには当然住む場所を確保することも含まれています。

住宅ローンは、それを金利という利益を取りつつ、貸してあげて、分割で返してもらおうじゃないか。
ざっくり言うとそんなシステムです。

投資に回したら別途居住費用の支払いが残る

つまり30万円の手取り月給であれば住宅費に回せるのはざっと毎月9万円程度じゃないか?
じゃあ毎月9万円の返済額になるくらいの住宅ローンは貸してもいいだろうと。
そんな程度です。35年かけて9万払うなら大体3,000万円は貸せるだろう。
そんな感じでローンは決められます。

でもこの9万円の返済を投資に回されてしまったらどうでしょう。
住居費は月9万円とみていた相手が、その9万円の支払は投資に回してしまいます。うまく毎月9万円以上稼げれば返済は問題ありませんが、そもそも
投資として9万円以上稼げることは銀行は審査していません。
まさに詐欺的な方法なわけです。

そして9万円を投資に回したら、別途居住費が発生しますから、30万円の給料であれば9万円までの支払が限度だと判断した銀行の審査の前提が崩れてしまいます。だから住宅ローンを借りて投資用物件を買うという事はしてはならないわけです。

しかしながら結果的に住宅ローンで買った物件に住めなくなることはある

私のケースもまさにそれで、
私は2007年11月に住宅ローンで自宅を買いました。
諸費用(仲介手数料と登記費用)込で2,900万円。
1回の借入としては人生最大の金額で、それは今も変わりません。

間取りは1LDKで44.8㎡
夫婦二人で住むにはちょうど良い広さでした。
築年数もまだ12年程度です。
私たち夫婦はここで新生活をスタートします。

しかし、それから3年程度経過した時には
私たち夫婦には子供が産まれ、そろそろ二人目の子供も欲しいという時期に差し掛かります。
子供服の収納場所など、モノが増えて色々なスペースが1LDKでは足りなくなってきました。
このような時はどうしたらいいのでしょう。

結論から言うと『銀行との交渉』
これ以外にはありません。
まずは話し合いでしょうね。
銀行も新婚夫婦に住宅ローンを出したわけですから、それは家族が増えることも承知していたはずです。
それにもかかわらず44.8㎡の1LDKでは狭いわけで、その点をスルーして貸したので、責任の一端はあると言えましょう。
そもそも狭い点に懸念があったら事前にもっと広い家でなければダメと言っておくべきであったとも言えましょう。

まあ、色々な主張は考えられるわけですけど、
銀行としっかり交渉をしていくことが大事なことは変わりません。

想定される銀行の回答はたくさんありますが

① 一括返済をした上で住み替えなさい。

自己居住を条件に借りたので、自分が住めない以上は全額を一括して返済せよ。という権利も当然あると思います。売却して返済して、差額は自己資金で手当てするなり消費者金融で借りて返せと。形式的にはそのような権利もあると言えましょう。

② 投資目的ローンに切り替えなさい。

引っ越しして従来住宅ローンの担保になっていた物件を貸し出すのであれば、投資目的ローンの審査になるので当然投資目的ローンに借り換えるべきでしょう。金利は住宅ローンのような低金利ではなく、高めの投資目的ローンの利率が適用されます。そして投資目的ローンで融資できる上限以上の残高がある場合には当然自己資金で一部返済した上で投資用目的ローンに切り替えるのが筋でしょう。
これもありえる話です。

③ 住宅ローンはそのままで新しいところに引っ越しても良い。(無条件)

あ、そうですか。どうぞどうぞ。
そういわれて、返済条件はそのままで、賃貸に出して、自分も賃貸住宅に住む。

実は私のケースはこれでした。
銀行取引をしている間は、銀行に自分の住所地を正確に報告しておく義務があります。
そのため、「引っ越し完了後」銀行に住所が変わったことを報告しに行きました。その際に住宅ローンがあることを指摘されましたが、手狭になったので引っ越しました。と伝えたら、窓口のお姉さんは首をかしげていましたが、最終的には受理され、住宅ローンはそのままに住所変更手続きが認められました。

これはどういうことなのでしょうか。

住宅ローンをそのままに、その物件を賃貸。さらに自分も賃貸住宅に引っ越したケースで銀行内部で行われていたこと

一応私も金融業界に勤めていたので、
窓口のお姉さんと支店長との間のやり取りを想像してみます。

窓口「住所変更ですが、住宅ローンがありますね。。。少々お待ちください」
SAT「はい」

窓口お姉さんが支店長席へ移動

窓口「支店長、あちらのお客様、当行の住宅ローンを借りているのに引っ越してしまっています。それに今後さらに住宅ローンの対象物件を賃貸に出すと言っています」
支店長「あの人(SAT)延滞ある?」
窓口「ありません」
支店長「引っ越した理由は?」
窓口「家族が増えて手狭になったからだそうです。」
支店長「どれどれ、なるほど1LDKで3人は狭いね、それで借りてから何年経ってるの?」
窓口「3年です、本来であれば全額返済して頂いて‥‥。」
支店長「いいよいいよそんな面倒なことをしている暇はないんだ。住所変更の手続きだけして帰ってもらって」
窓口「はい」

このようなやり取りがあったと推測します。
なぜならば私、銀行ではありませんが、証券化された住宅ローンの回収チームにいたことがあります。
そこでは住所変更、繰り上げ返済、売却など、さまざまな手続きを行う女性がたくさんいる中で私が長期延滞の回収担当として働いていたのです。

その部署で働いている時にも、実際離婚して、住宅ローンで借りた物件を賃貸に出しているお客様がいました。
その際に私が上司に相談したら「いいよいいよメンドクサイ、毎月ちゃんと払ってんなら放っておけばいいよ、それよりあの延滞している債務者の物件売れよ早く」
みたいな対応をされました。
それをもとに銀行員の対応を推測したわけです。

メガバンクと地域密着の信金信組では対応が違うかもしれない

金融機関はどこも多忙ではありますが、支店長の判断で「これは問題だ!」という判断をするタイプの人だと、違った対応があり得ると思います。
私の場合には担当支店の判断権限者が「面倒なことはしない」という対応であったがため、このようにスルーされたのだと思います。
いつでもこううまくいくとは限りません。

銀行の内部管理システムで、住宅ローンを貸している先の客が住所変更をしようとした場合にはローンを整理しないと住所変更ができないなど、システム的に不正を許さない!という内部管理体制になっていない限りは、この住宅ローンで投資用物件にしちゃう抜け道は延々と残ることになると思います。

私の借りた相手はメガバンクでしたし、システム的に住宅ローンの担保を賃貸化させることを防ぐつもりもないということでスルーされたのでしょう。
実際正常にローンを払っている相手ですから、放置しておけば返済も進みますし、正常に完済されてしまえばいいわけで、延滞状態にでもならなければ気にするほどの事件でもないのです。

それでも住宅ローンを使って投資用物件を買うことは絶対にやめよう

銀行に審査してもらうことをどう考えるか?
という論点にもなりますが、
私は投資対象物件を銀行が審査してくれるというのはすごいサービスだと思っています。

だって私の財務状態を分析してくれて、投資対象物件がきちんと収益をあげられるかどうか?返済ができるかどうか?
自分以外の第三者、それも金融のプロに審査してもらえるわけです。
それは実はすごいことです。
お金を貸してくれる上にさらに事業内容の確実性まで検証してくれるのです。
ですから、銀行がNOという事業は本当に危ないのでやめておいた方がいいという見方もできます。

それを目的外融資を引き出してやろうという考えでローンを申し込むと、自分が実際に行うことと違った観点で審査をされてしまい、本来の事業のリスクなどを見過ごしたまま取り組むことにもなってしまいます。

銀行を敵に回して商売ができないのが、不動産投資です。
絶対にやめましょう。
私のようにやむを得ず子供が増えて手狭になった場合には
私のような事後報告ではなく、事前に相談するのが望ましい対応だと思います。

事実1号物件のパフォーマンスは最悪だ

実際1号物件のパフォーマンスは5%程度と最悪です。
キャッシュフローもわずか毎月1万円程度のプラス。
投資としてはダメな投資になってしまいました。
お金がついてくるという事は危険も多いということです。

スルガ銀行問題を見るまでもなく。

また、そんな住宅ローンを抱えていたら、
2本目の住宅ローンは融資してもらうことはできません。
私は63歳まで住宅ローンを完済しない限り次を組めないかもしれませんね!

変なリスクを取らず、正々堂々、正直不動産でいきましょう。

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