セルフホワイト労働の限界

資本主義の分析

定時退社/有給フル消化の試みは失敗した

ホワイト労働勤め人大家として、より生きやすい世界を目指す試み。

「定時退社有給フル消化」にチャレンジしてきた。

しかし

これは失敗に終わった気がする。

私のか考えはこうだ。
社内の仕事の総量を100とする。

社員10人であれば一人10の量を処理すれば足りるのである。
私は与えられた仕事10を効率よく処理して
定時退社、有給フル消化を実現しつつあった。

だが、これは2つの圧力を受けて頓挫したと言ってよい。
そしてこの2つの圧力は私がコントロールできない問題である。

1つ目の圧力とは
〇 経営側は総量100を120へ上げようとする圧力

当然である。資本はそれ自体が増加しようとする意志を持つ。
その意思は株主から選任される役員によって現実化させられる。
労働コストは増やさずに収益を上げるのが「生産性の向上」だ。
特に株主が強欲に分け前を求める上場企業ではこれが特に厳しい圧力となる。
この点は、わかっていたし、
勤め先のオーナー社長は過度に収益拡大を求める経営者ではないから、
うまく制御できると思っていた。

2つ目の圧力
〇 勤め人側の担当10を7に下げようとする圧力

もう1つある。
仮に経営側が仕事の総量100を維持しようとしたとしても、
社員10名が一人10をしっかりこなすとは限らないのである。
隙あらば10を9に、8に、7に。と、下げようとする。
私もそうなのだと思う。
その点は謙虚に認める。

100が100で回り始めると、一人がこう思う
「俺だけ9にしても大丈夫じゃないか」
そうなると、一人の社員が11しなければならなくなる。

全体がうまく回っているのだから、少しくらい手を抜いてもわからない。
というヤツだ。
有給を消化し、家族サービスにいそしむ。
体調が悪いと言って受ける仕事を減らす。

こうなるとマズイことになるのは自明である。
仕事が90しか回らなくなると、
経営者は10を何とかしないといけなくなる。
一人採用するという選択肢もあり得るが
当然人件費は増えるから、収益が落ちる。

既存の労働コスト10のままで処理を試みる。

元気なヤツ、暇そうなヤツに感覚的に仕事は割り振られる

俺だ

当然俺になる。
何も見ていない管理職であれば
定時退社をしているヤツ。
有給をフル消化しているヤツ。
副業にいそしんでいるヤツに仕事を与える。

当然である。

しかし、もっと重要なことは
「チームのメンバーをよく見ている管理職でもそうする」
ことなのだ。
優秀なマネージャーであれば、
私が担当分10を問題なく処理していることは分かっている。
しかし、私が15処理できることも当然のようにわかっているのである。

8で辛そうにしているメンバーではなく、
私を12にして帳尻を合わせようとする。
さらに優秀であれば8のメンバーの評価を下げて、12のメンバーに手厚く賞与で報いる。

これは全く正しい。
誰が見てもいい上司だろう。
しかし、私はこれを望んでいない。

8で辛そうな社員であっても労働の回復コストが給与である以上は
12での社員と給与は大差がない。
「オモチャの勲章」程度の差なのである。

かくして、私が採用された専門分野とは畑違いの業務まで行うように指示されてしまう。

管理職が優秀であろうとなかろうと、
定時退社、有給フル消化社員に対して仕事が回ってくる。
これが結論だ。

勤め人の最適なふるまい

このようにして、ヒラ勤め人の最適行動は
① 残業をして、自分の業務量が限界であることを示す。
② 体調を悪くして、自分に重い仕事が回ってこないよう防御壁を固める。
③ 有給消化率は目立たないように周囲と同程度に抑えつつ、取得する。

このようになる。
全員が10の仕事量をすればいいのだが、
そうはならない。
8にしよう、7にしようとする社員が登場するので、
しわ寄せは10の元気な社員となる。
しかし、労働力回復のコストが給与である以上は、
7の仕事量の社員も、13の仕事量の社員も、金額に大差がつくことはない。

結局、勤め人というシステムは共産主義的な要素を持っている以上、
このようにならざるを得ない。
これは資本主義が共産主義に勝利する過程で払われた犠牲でありつつ、
労働者の勝ち得た権利なのだ。
良いともいえるし、悪いともいえる。

ホワイト勤め人+大家というポッと出の思想

資本主義と共産主義という、人類が長年血と汗で紡いできた歴史の前には
私の挑戦など、容易にはじき返されるのは当然だったのだ。

当たり前である。

こんなことは実行に移す前にわかっていたことだと言える。
あえてやってしまって「ああ、やっぱりね」という感じか。

若かりし聖丁も、わかっていて、激務高給勤め人に挑んだ時期があったが、
私の試みも同じような結末に至った。
年齢としては20代と40代の差はあるが。

しかし、体験したのと机上の理屈ではまた違う。
私は定時退社&有給フル消化の看板を下ろすが、
実感と共に得た経験をもとに新たな挑戦を行う。

適度な「残業」と「体調悪いアピール」確かに、
私はこれをやっていた。
それがあまりにうまくいっていたので、
もう一歩進めたのだ。

その結果、今の仕事が山のように降ってくる状態になったのだから、
コマを1つ戻せばいいだけである。
ホワイト勤め人の職場でもこうなるのだから、
世間の会社はすべからくこうだろう。

ホワイト勤め人大家で、定時退社有給フル消化はやりすぎだった。
そこは認める。

しかし、限界もわかった。

最適なゾーンは
周りに合わせて残業、辛そうにする。
昇進は回避しつつ、110%の成果。
このあたりなのだ。

その上に残余の労働力で大家業を積み上げる。

ここであった。
私は最適なゾーンをちょっと超えてしまっただけだ。
最適なゾーンに戻ることにする。

ここで、上司と対立したり、
もっと仕事をしていない社員に矛先を向けたり、
オーナー経営者に待遇改善を求めるのは悪手だ。

反発して過剰労働をしたり、
成果を出して上を目指すというのも間違いだ。

適度な頑張ってる感じを出しつつ、労働力を自分のために温存する。
そこに戻るのが一番だ。
前進するだけが正解ではない。
後退して戦線を維持する。
これが正解だろう。

ナイスチャレンジ!

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