分からないものを分からないと言う

運用の話

値札のついていないものを買うのだ

スーパーに並ぶ食品

りんご1個 150円、レタス1玉 250円

分かりやすい。
しかし、これを農家の畑まで直接出向いて、
農家と直接交渉したらどうなるだろうか?

リンゴ農家に行って、1個150円で売ってくれと言ったら、
喜んで売るだろう。
当たり前である。
リンゴ農家は150円から流通コストを差し引いた値段で卸売しているのだ。
流通コストをのぞいたら30円/1個かもしれぬ。

農家の木にぶらさがっているリンゴには値札がついていない。
それに値札を付けるような作業。
それが投資家にとって最も重要な行為である。

目の前の朽ち果てた家に値段を付けなさい。


この問題に答えられない人は、まだ、大家業のスタートラインに立っていない。
これが出来ないと、業者の言い値で買わされることになる。

➀ まず土地の値段を調べる

https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

路線価、公示地価、実際の売り出し事例を調べる。

仮に、1㎡あたり9万円が相場で、200㎡であれば土地価格は大体1,800万円である。

ただし、この1800万円というプライスは、更地であって
何か土地利用に制限がないことを前提としている。
この家には制限があるだろう。
そう、家が建っている。
新築したい人からしたら邪魔である。
このボロ家!!!!
このブタ!!!!

という訳で解体費用を多めに200万円と見積り、これを控除した、1,600万円。
これが1つの買値の指標となる。
これと比較して高い!安いと判断していくのである。

② 次に収益還元

漢字としてはイカツイのだが、
利回りから逆算して、「お前!なんぼ儲けたいんや!?」という話。
仮にこの家の家賃が月5万円とする。
リフォーム費用が300万円かかるとしよう。

私が求める利回りは30%です!
となれば、年間家賃60万円÷0.3=200万円が買取金額になるだろう。
リフォーム費用は300万円なので、逆に100万円くれたら引き取りますよ?
と、まあ、そういうことになる。

普通に利回り10%求めるのであれば、
年間家賃は60万円の10倍、600万円で買うことになるが、
リフォーム費用は差し引いて、300万円で買うことになるだろう。

その価格を提示したら、売り手としては、
えー1800万の土地を300万で売るの?ヤダヤダ。
だったら300万で自分で解体して売ろう、1800万円で売れるし…

という判断をするだろうし、
逆に相談を受けた不動産屋が先に買ってしまうだろう。

不動産ってのは、値段がついていないように見えるが、
ソコソコ利用価値がある土地は、
地価という「相場」が形成されていて、価格は付けることができる。

そもそも地場の不動産会社の人たちは高卒から偏差値が低い大学出身者も
普通に商売しているのだ。
平均的なアタマがあったらできる商売なのだ。

一方で企業の価格は分かりにくい

私の勤め人の仕事でやっていることだが、
企業、特に中小企業の価格ってのは不動産と比べると非常に設定しにくい。

今期3,000万円の当期純利益。
前期も、前々期も同じ、それが10年続いてきたと言うなら、
ある程度来年も再来年も続くだろうと推定はできるものの、
確実なものではない。

不動産よりもダイナミックに業績は変動するし、
社長が交代したらガラッと変化することもある。
取引先との関係性、主要な従業員がやめないか?
などなど。

こちらの将来予測というヤツはかなり難しいし、
決算書から当該企業の現在地、将来予測をすることは極めて困難だ。

勤め先でも、もっともらしい理屈をつけて、
投資判断をしたり見送ったりしているが、
まあ、ひどいものである。

破綻前提みたいな価格で買った企業が回復したかと思えば
せっかくピカピカに債権カットして新しい船出となった企業が
1年後に大幅な債務超過に転落したりする。

要するに投資判断する人物も、分かってないのである。
もっともらしい理屈をつけて、投資家を納得させるための資料を作るのが、
仕事なのだ。
私はこれが嫌いだ。

売りたくもない金融商品を無知な人に売るセールスも嫌だが、
それに次いで、このような体裁を作るための資料を作る仕事も嫌だ。

以前は少なかったが、最近はこのような仕事が非常に多い。
というよりむしろ、そういう仕事しかない。

なぜ書類文化が発展するかと言えば、
要するに経営者自身が楽をしようとしている。
現場に出ずに書類で済まそうとする。
要するに経営者の怠慢がこのような状態を引き起こすのである。

話はそれたが、不動産と比較すると企業の価値分析は難しいという話なのだ。

株式投資の場合には、利益と株価のバランス、純資産と株価のバランスから
ある程度割安、割高、程度は分析できる。
ただ、結局来期の業績の読みなどは、難しいのだ。
当たった人も結局は読みが正しかったのか、たまたま丁半バクチに勝ったのだか、
分かったものではない。

分からんものは分からんのである

私は分析の結果、分からんものは分からんと言ってしまう。
そもそも他人の会社の業績なんてわからんよ。

まあ、過去のトレンドから言ってこの程度はやるでしょう。
という程度は言えるが、
前述の通り、企業業績は本当に分からないのである。

であれば、不動産担保やら、投資有価証券など、
確実に換金できるカネを評価するしかない。

分からないものは、「分からない」とハッキリ言うべきである。

お前!今月の目標数字は達成できるのか!!!!
と、詰められたら、
「分かりません」で良い。
誠実であろうとすればこのような回答になるのだ。

その場しのぎの儀式であれば
「絶対できます!!!!」
と絶叫したらいい。
出来ない場合にも同様だ。

アナタは病める時も、健やかなる時も、嫁を愛することを誓いますか?
という質問も同様だ。
一生持続するかどうかは分からんのだ。

大きな声で「分かりません!」と絶叫するべきであろう。
離婚は2組に1組らしいから、
半数が嘘つきということになる。
まあ、全員嘘つきだ。

何が言いたいかというとだな。

「分からん」
という専門家は、信用できる。
テレビのコメンテーターのようなヤツは100%信用できない。

分からないとは、
誠実でなければ言えない言葉なのである。

をはり