私の親父殿

相続・教育・次世代

高卒JA職員兼業農家

私の親父殿の人生を分析し、私に活かす。
親父殿も私も3人の息子を授かった。
彼の人生を私の他山の石とすべく分析を開始する。

親父殿も私と同じく、
社会に出た瞬間はまさに「徒手空拳」であった。
祖父は小作農家で田んぼ2反程度の零細であった。
零細なのだが、
「農家の息子は農業高校でいい」
という主張だったらしい。

祖父は積極的に農業高校に親父殿を進ませたのではないと思う。
単にカネがないから大学まで出せなかっただけの話であろう。
実際親父殿の姉は教員になろうとして、
大学進学を懇願したものの、拒否されていると、
後年語っている。

祖父は貧しかったし、
その長男である親父もまた貧しかったのだ。

それでも親父殿は
私に関しては東京の私立大学を卒業させており、
弟も地元の国立大学を卒業させている。
兄は大学進学という選択をしなかったというよりも
その能力がなかったのだと思う。

一方、親父殿は、その先代の祖父よりは明らかに経済力が高い。
ただ、祖父だって、若かりし頃はシナ事変に出征したと
語っており、戦後の混乱期に青年となっている。
日本中が貧しかったのであり、
親父殿が高度経済成長期に青年となっていることと比較すると、
その経済的成功不成功は外部的要因の影響も強く受けたことが分かる。

両者(祖父、親父)ともに、
日本の平均的な経済成長と似たような経済状態であったのかもしれない。
祖父に関しては特に、
平均を大きく超えることはできなかったのである。

ただし、親父殿の経済的感覚は、
平均を大いに上回っている。
色々な証左はあるが、
まず、日記をつけている。
天候、行動、全て記録している。
この点は私よりも優れていると思う。
農家(兼業)という職業柄でもあろうが、
記録するという習慣は素晴らしいと思う。

また、JA職員として35年勤め人をしながら、
勤め人+アルファを実践していた点も秀逸であろう。

田、山林、畜産、漁業に手を出している。
田は既に10町以上に増やしているし、
山林に関しては、登記簿だけで「東京ドーム〇個分」と自慢している。

畜産に関しては1989年の牛肉オレンジの自由化というタイミングで
スパッとやめてしまった。
保護貿易であれば食えるが、アメリカと勝負しても勝ち目はないと、
感覚で理解したらしい。
実際に収支が赤字になった段階でさっさとやめた。

同業者からは「逃げた」と言われたようだが、
この辺の見切りは素晴らしいと思う。
惰性で続けていたら、
おそらく私は大学を卒業できていない。
続ける事業、やめる事業の選別もしていたようだ。

漁業に関しては地元の川で魚を採るだけなのだが、
私の若かりし頃は週に3回以上は魚の塩焼き、
天ぷら、煮つけなどであった。
イワナ、ヤマメ、つぐら、アユ、たまにマス。
東京で食べたらとんでもない金額になるゴチソウだろうが、
子供のころはつらかった。
毎日川魚を喰わされるのがキツかった…。

が、思えば、食費を大幅に安くできたことは想像に難くない。
米と魚が無料で手に入っていたのである。
当然農家なので野菜も作る。
山林を所有しているので山菜も食べる。
子供にとって山菜は苦いだけなのだが。

そんな生活が嫌で嫌で東京に出た私としては、
あの生活もアリだな。
と、今になって思う次第である。

親父殿は勤め人+アルファとして、
農林水産畜産など、ほぼ全てに手を出した。
今もドローンによる農薬散布に興味津々だ。

なかなか生活力がある。

ただ、投資は失敗している。
バブル期に株をやった。
大いに損したらしい。
今になって、売らずに持っていた株の価格が戻って来たので、
30年ぶりに塩漬けしていた株を売って、
損切りをやっている次第だ。

老後2,000万円問題、俺はクリアした

親父の口癖である。
73歳にして、「すでに2,000万円以上現金があるから、おれはクリアした。」
と、豪語している。
国家が求める水準をクリアしたのがうれしいようだ。

そもそも、今、73歳の現時点で、
毎月貯金をしている。
米も作っている。
老化により川で漁をすることは危ないのでやめてしまったが。

国家が言う
「老後2,000万円不足する問題」
とは、
2,000万円を食いつぶしながら、年金をもらって、
なんとか100歳まで逃げ切るという計画である。

年金に全く手を付けない親父殿は
まだ現役世代なみの生活ができているのだ。

日本の平均的大卒勤め人の高齢者が、老後2,000万円も貯蓄できていないことからすれば、私の親父殿のマネーリテラシーは、
平均を大きく上回っていることは確かなようだ。

ただ、2,000万円をクリアしたと自慢する程度なので、
1億はない。
語るに落ちるとはこのことだ。

しかし、農機具に5,000万円以上投資している。
これなかりせばキャッシュがさらに5,000万円残ったかと言うとそんなことはない。

しかし、私が子供の頃、家族8人総出で稲作をしていたのに対して、
今、親父殿は73歳で一人で2町を超える田んぼを耕作している。
これは間違いなく農業用機械のテクノロジーのおかげだ。
減価償却費により住民税は20年以上非課税なのだ。

色々話が散らかるので
財務省が推奨する老後2,000万円貯蓄をクリアしていることから、
どうやら親父殿のマネーリテラシーは平均より高いということを
言うにとどめる。

家、車、結婚

親父殿の家は祖父の代に建築した家をそのまま使っている。
「リフォームに2,000万円以上払った」と言っているが、
新築、ローンという資本主義の罠を回避できている。
なかなか素晴らしい。

車に関しては新車には乗らない。
中古車と、軽トラを駆使している。
農業用機械、畜産をやっていたころはホイールローダーも扱っていた。
重機まではいかないが、トラックなども自在に操る。

車、特にカネのかかる車の点はうまく回避したようだ。

結婚式については挙げたのがどうかも知らないが、
おそらく大したことはやっていない。
25歳当時の親父殿&母親にカネがなかったことは明らかだ。

ムスコの教育に関しても公立中高に進ませており、
教育熱心ではない。
とはいえ、教育に否定的ではなく、
ムスコが行きたいと言う方向には自由に進ませている。

このように分析してみると、
家、車、結婚(それに派生するもの)という
3大トラップを見事に回避している。

私は長男をSAPIXに行かせるというヘマをやらかしはしたものの、
ここから切り替えた。
その意味では私は罠回避ポイント60点といったところか、
親父殿は100点に近い。

岩手の勤め人+アルファ
千葉の勤め人+アルファ

このように考えてみると、
私も親父殿も似たような戦法を採用している。

勤め人をしながら、ビジネスを複数回す。

私の地元、岩手の農村部における経済の困窮ぶりは著しいが、
親父殿はブイブイ言わせている方だ。
耕作放棄地を買い集めて領土を拡大している。

親父の後継者が不在なので、
非常に不安だが、
この経済基盤であれば、
私が承継してもいいと思える。

残念ながら老後に岩手に戻ることは、
妻が頑なに拒否している。
また、私の兄は理容師であるが、
雇われ理容師である。

兄は家を買う罠は回避したようだが、残念なことに車好きだ。
車に散財している。
さらに子供5人というコストも抱えている。
経済的に困窮しているのだ。

兄も勤め人をしながら副業にいそしんでいたようだが、
それはあまりうまく言っていないと思われる。
親父殿の構築した田舎の帝国は兄が承継するのが適当だろう。

困窮した老後を都会で迎えるよりは、
農村で豊かに暮らしたほうがいい。

JA早期退職勤め人なのに羽振りが良い親父殿

このように、
私の親父殿は今、羽振りが良い。
3人の息子も全員自立しているので、
生活維持コストも低く、安定している。

コメ、野菜を作り、
コメと野菜の一部を売って生活している。
年金ももらえているが、手を付ける必要がないらしい。

今思えば、
親父殿は勤め人+アルファだったのだ。
私は親父のマネをして、勤め人+大家を目指したわけではないが、
実は深層心理に親父の生き方がインプットされていて、
司法試験を挫折して、
ウダツの上がらない勤め人となったときに、
この戦法(勤め人大家)がひらめいたのかもしれない。

親父は53歳まで勤め人をやっていた。
もっと働く意欲もあったのだが、
JAが競売申立した不動産に対して、JA職員の身分がありながら、
入札を行い、落札。
それでJAの役員と大ケンカをしていた。
それがキッカケとなって退職した。

別にJA職員が勤務先が申立した競売を落札したからと言って
社会問題になったわけでもないし、
世間で騒がれたこともない。

裁判所の競売手続での売却なので、
不正が行われたわけでもない。
親父は正しかったのだが、
組織の論理とはそういうものだ。

ただ、私も債権回収はしているが、
勤め先の有する債権の担保不動産がいかに良かろうと、
自分で買うことは考えたこともない。

親父殿は攻撃性が強すぎたようだ。
私にそんなことを言われたらおしまいだ。

まとめる。

高卒JA勤め人の親父が子育てを終えて、
楽しい生活が出来ているのは、
勤め人+農林水産業というビジネスをやっていたからだった。
私は今頃その本質に気づいてしまった。

親父のキャッシュフローや、資産規模など、
10年前にすでに上回っているが、
私の未来もかなり明るい。

勤め人+アルファの優位性は、私の親父という身近な存在からも
証明された。

勤め人は悪くない。
但し、自分の商売と並走させることだ。
それによって、最高になる。

つづく