慌てる乞食は貰いが少ない

運用の話

勤め人の仕事は投資回収である

私はずっと不良債権の管理回収、その一環で正常債権も担当したことがある。
正常債権と不良債権は全く異なる。
正常債権における重要な作業は、

〇返済予定表の作成、送付。
〇金利変動の対応。
〇繰り上げ返済の事務手続き。
〇ローン保証会社への請求
〇初期延滞(3回まで)の連絡、督促
〇死亡時の団体信用生命保険への請求

言葉は悪いが、女子供の仕事である。
実際職場では派遣社員の妙齢の女性(独身率高い)が担当していた。

特に女性は初期延滞の常習者に連絡をするのを嫌がる傾向にあって、
私が代わりにやってあげると喜ばれた。
あの職場は今思い出しても楽だった。
戻れるなら戻りたい。
もうすでにその部署は部門ごと外資系の投資家に売却されたらしいが。

まあ正常、不良に関わらず、
融資、回収も理屈は同じだ。
いずれも投資・回収の要素が含まれる。

正常債権であれば、額面幾らに対して、
デフォルト率と、金利、担保から時価を算出して、
何%ディスカウントして買うか?
ということになる。

国債であれば3%、元本保証と言うことで、
元本で買う場合もあれば、
市場金利が1%の時の3%の金利が取れる国債ならば、
額面を超える金額での売買になることもある(債権価格の上昇)。

デフォルト債権の回収ってヤツは完全なる時価。
「再建築不可ボロ戸建調整区域だけど地下に金脈がある。」
不動産で言うとそんなイメージだろうか?
ただ、原則は債権なので、債務者の信用と、担保不動産が価格の前提だ。

不良債権投資とはそんな世界である。

急ぐべき案件と急いではいけない案件

不良債権で重要なことは、
「市況」これである。
市況は2つの意味がある。

1つは、セカンダリー(不良債権の2次売却)マーケット
1つは、不動産マーケット

この2つの市況である。
この2つの市況の読みさえ間違えなければ負けない。

不動産市況が下落に向いているのであれば、
買ったらすぐ、担保を売却して回収しなければならない。
逆ならホールドで良い。
(ただし返済のCFがあれば)
ホールドしていれば価値が上がるのである。

セカンダリーマーケットは不良債権の投資家である。
サービサーだけではない。
投資銀行、証券会社、事業会社などが
不良債権市場に参入してきている。

アサックスも一時参加していたが、
儲からないと判断してサッサと退場していった。
この2次売却市場で、不良債権を売り抜けるのが重要である。

この2つでミスってしまうと苦しいが、
債務者から自力で回収する。
という基本戦法で突破することもできる。

私は正攻法もできるし、市況を読みながらの勝負もできる。
正攻法で無理だ。
と判断したら、市況での勝負にフィールドを移す。
大家業も似ていると思うが、
不動産自体を運用して稼ぐパターンと、売却して稼ぐパターンがある。
不動産には「賃貸マーケット」と「実需マーケット」があるのとも似ている。

債権は不動産との相性がいい。
ヘタクソなヤツは大体市況の読みがヘタクソである。

クソ案件でも利益を出す私、予想通り損をするアイツ

クソ案件というモノがある。
債権の価値ゼロ、不動産の価値3億。
こんな案件だ。

私は前任担当者が諦めたこの案件で5,000万円の利益を出して終わらせた。
なぜクソ案件かと言えば、「買値が3億円だからだ」
3億円で売れる商品を3億円で仕入しているのである。
まあ、営業戦略上、こういう案件もあるには、ある。
仕方ないことだ。

しかし、前任の担当者は上司のお気に入りであり、
こんな儲からない案件の担当にしても仕方がない。
私に白羽の矢が立った。

私は当時の当地の不動産市況が悪くないと思っていたので、
しばらく放置する作戦を採用した。
案の定、アベノミクスで上がる、コロナでやべっ!と思ったが、
コロナマネーが不動産に向かい、さらに上がる。
結果、5年間塩漬けにして、不動産市況が上昇していくのに合わせて放置した。

最期はセカンダリー市場で3億5千万円で売却して完了である。
どうせダメだと思っているので、上司も関心がない。
ただ、マーケットの動きでこうだからという説明は全く通らない。
企業に働きかけて業績を改善するというのが勤め先のやり方だから、
そんな要素で放置するなんて許されないのだ。

上司のお気に入りは、やらかす。
何でも改善すればいいというもんじゃない。

当時東京都内のいい立地に自社ビルを持っていた企業があったのだが、
まだ不動産が上がり始めの時期に、これを売らせて、賃貸物件に引っ越したのだ。
馬鹿である。
不動産市況はこれから上向いていくのだから、
不動産をホールドしておけばよかった。
余計な賃料負担も発生して、業績は悪化の一途である。

結局、トントンで手放して、
上司の言葉は「お気に入り君じゃなければ損をしていた」と絶賛である。
損をする案件で利益を出した私は無視。
利益を出せる案件でトントンのお気に入り君は絶賛。

まあ、勤め人ってのは不公平であるし、
それが普通だ。
見ている人は見ているものだ。

私も急いでゴッツンコしたこともある

私も失敗したことがある。
15号物件である。
12号物件の隣地だったのだが、
〇隣地だからと言って買い急いで高値で掴んでしまった。
〇金もないのに高値で買いを打診して、トラスト✕、アサックス✕となって、行き詰った。
〇公庫はOKだったものの、使おうと思っていた平成築の戸建が取り壊しの条件が付けられた。

結局、売れずに塩漬けである。
投資総額1,700万円に対して家賃9万円である。
収益性が著しく低い。
特に経験が少ないビジネスにおいてはそのようなミスは起こりがちである。

慌てる乞食はもらいが少ない。
長期で勝負するのか?
短期で勝負するのか?

うまい担当者はラッキーのように見えるファインプレイを連発する。
へたくそな担当者はチャンスをピンチに変える。

をはり