私の勤め人仕事は、経営再建、不良債権の買い取りですから、
どうしても経営が苦しい会社を担当することになります。
経営が苦しい会社には苦しくなる理由がありますし、
借金を返せなくなる個人にはそれなりの理由があります。
個人の場合にはシンプルで、
住宅ローンや投資用マンションの借入、さらに株式の信用取引で発生した債権等があります。
給料だけでは返せなくなり、返済が滞ります。
返済が滞る理由は「リストラ」「離婚」などが多いです。
投資用マンション購入のための借入の場合にはそもそも物件が高すぎて、
返済がキツく、家賃だけでは返済できないほど高値です。
経営者、企業の場合には何というか金額がデカイですね。
理由も様々です。
今日面談してきた会社はなかなかすごかったです。
本業は食品メーカーで、創業以来一度も営業赤字をだしていない。
にも関わらず、売上高に匹敵する債務を抱えて苦しんでいます。
理由の1つは、経理担当役員による横領です。
十数年に渡って毎年1億円以上計上してきた会社なので、
経理担当者が魔が差したのでしょうね。
さらに経理担当者が身内の人間だったことも発見を遅らせました。
そして業績が傾いてきたときでも、会社からカネを抜くことをやめられず、
最後には発覚してしまいます。
経理担当者は自分の横領を隠すために粉飾決算を主導し、さらに
顧問税理士も抱き込んで不正を隠蔽しようとしてきました。
これをやったら一発で会社はアウトです。
銀行は新たな融資を行えません。
返済するだけの銀行取引になってしまいます。
2つ目の理由はバブルによって得た利益、
まさにあぶく銭で遊んでしまったツケが回ってきたためです。
この会社は駅近くのいい土地で商売をしていたので、
バブルのころに売却し、10数億の利益を得ました。
そして本社は移転してのですが、
工場を新築してもなお10億円以上の財産が残りました。
当時は高額納税者が公表された時代ですから、
まあ絶好のカモになったわけです。
詐欺師集団が寄ってたかって身ぐるみを剥いでいこうと寄ってくるわけです。
これによって10数億の資金はあっという間にだまし取られ、
さらに借金が残ってしまうという悲惨な状況に陥ってしまったわけです。
いかがでしょうか?
本業に集中していれば今頃は日本有数の優良企業として、
光を放っていたことでしょう。
それが債務超過の借金漬けです。
会社経営に集中してよそ見をしないことは重要です。
そしてこの会社はまさにライオンだったのです。
せっかく食品メーカーとしての市場(=サバンナ)で最強の立場になったのに、
土地の転売という、まったく専門外の領域であぶく銭を掴んでしまい、
詐欺師集団の儲け話につられてしまうという馬鹿な行為をしてしまったのです。
サバンナを出て、不動産取引と言う沼地に行ってしまったのです。
沼地ではライオンはワニに勝てません。
ライオンはサバンナにいるからこそ最強なのです。
そして、あぶく銭は所詮あぶくです。
一瞬で資産を積み上げた人は、結構雑に資金を突っ込んで損を出す傾向にあります。
それを悪銭身に付かず。
と言うわけです。
私もけしてその会社のことを笑えません。
しかし、私の場合には10年かけてコツコツコツコツ積み上げてきたのだという
自負はあります。
まだ詐欺師が寄ってくるほどお金もないのですが、
仮にやってきても私は手を出しません。
分からないものに手を出すほど愚かではありません。
私が常に投資話を持ってくる相手にいうのは
「じゃあ自分でやれば?」
って話です。
競馬の予想屋という商売があるらしいのですが、
あれこそいい例です。
そもそも儲かる話であれば人に教えることはありません。
伝聞で耳にした時点でウソであることが推定されます。
じゃあ世にある不動産本は嘘か?
と、言われると本当ですが、
不動産投資本は著者が本を書いて印税を稼ぎたい。
または有名になって影響力を高めたい。
そんな目的で出版されるので動機がはっきりしています。
儲け話を疑ってかかれないと、
いくら投資で収益を上げても全部失うことになります。
レベル1で王者の剣を手に入れても使いこなせないのです。
まずはこん棒、どうのつるぎ、くさりがま、鋼の剣、鉄のオノ、草薙剣・・・・
と、様々な武器を持って使いこなした先に手に入れないと、
使いこなせず、結局失ってしまいます。
そして、ライオンになれたならばサバンナから出ないことです。
食品メーカーとして毎年1億の利益が出せるなら、
それを2億、3億にするべきです。
サバンナ最強の地位を不動にする動きをするべきであって、
沼地でも勝とうとしてワニに食われないことです。
不動産で成功したら、
同様にまた不動産で成功すればいいのです。
さらに深い知識やネットワークを作って深く掘るべきなのです。
株や外貨でも稼いでやろうなどとは思わないことです。
株や外貨に使う時間を不動産のさらに深みに投下すれば、
もっと大きな成功を得られるはずです。
やはりこの食品メーカーの失敗に学ぶことは、
余計なものに手を出すな!
これに尽きます。