いい自転車操業と悪い自転車操業

運用の話

自転車操業の定義

一般的には、借金を返済するためのカネを、
他から借りてきて、返す。
という行為を連続することである。

よく借金まみれの個人が、
三菱からの借入30万の返済が25日だから、
24日に三井住友から30万借りて返す。
三井住友の返済期限が23日だからこっちはみずほから借りて…
と、毎月の返済期限とカードの引き落とし日、給料日などをやりくりしながら、
なんとか回していく様子を表す、極めてネガティブな言葉として使われる。

税理士の菅原先生もこのように仰っている。
実際そうだと思う。

私の経営が問題だったのは、
別に返済期限でもないのに、
繰上返済をして手元の現預金を少ない状態にしていたことが問題だった。
確かにまだ300万しかないが、
手元にキャッシュを多めに持っておくと安定する。
 
損益計算書から生み出される利益が
現預金として積みあがる。
これは確かに良いものだ。

しかし、借入金として調達した資金も、
(さらに借入それ自体は非課税)
同じく現預金として口座に積みあがる。

この2つは全く同じ現預金、キャッシュである。
何もおかしいことはないし、
トヨタも国家予算並の負債を抱えており、
売上を出して、返済して、買掛金を払って、売掛金を回収している。

ペダルを漕いで、
後輪に動力を伝え、後輪の回転が前輪に伝わる。
入金→支払→回収→支払→入金
このように回転していくこと自体を自転車操業と定義するならば、
全く問題ない。

自転車操業の定義を、このような資金の回転を自転車の
チェーン、後輪、前輪の回転に例えたもの。
と、定義する以上は善でも、悪でもない。
単なる事実を表現したものと言える。

良い資金繰り、悪い資金繰り
と、言っているに過ぎない。

要するに資金繰りなのである。

ただ、世間一般の自転車操業に対する定義は、
赤字で忙しく借りたり返したりしている状態。
である。

しかし、この世間のイメージから、
「借金自体が悪」
というイメージまで伝播してしまうと、
これは大いに問題である。

そもそも資本主義の目的は、
所有と経営の分離である。
法人でした借金、エクイティファイナンスが、
個人迄請求されないことで、
事業家が思い切ってリスクを取る。
投資家はその思い切った経営によるリターンを得る。
このようなダイナミックな行動であり、
それが社会全体を速やかに強く発展させてきた。
と、言える。

自転車操業から「借金は悪い」
という結果を導いてしまうのでならば、
それは資本主義の果実を放棄することにもなりかねない。

要するに、良い資金繰りと悪い資金繰りと、借金は全く関係がない。
借金が多いより少ない方が良いかと言えばそうでもない。

借入100億円、現預金100億円の企業と。
借入ゼロ、現預金10億円の企業。

同種同業で同じ商品を扱っていたら、
現預金100億円の企業の方が戦いを優位に進められるだろう。
そして10億円企業を潰した後で、
そのマーケットを支配して、ゆっくり返済する。

借金が少ない方がいいというアドバイスは、
借金を使いこなせない、自制心の弱い人には有効だが、
投資家、経営者にとっては無効だ。

借入金で調達した現預金を有効に使う

大事なのはここだ。
私は46歳に至るまで、
現預金を借入の返済にドンドコ回した。

しかし、これは間違いだった。
別に急いで返済する必要はなかった。
どうせ、また借りるのだ。
であれば利息だけ払って、銀行口座に現預金を積んでおけばよかったのだ。
(与信管理と言う意味では短期で貸したり返したりをさせた方が安心というのは、あるが)

私はまず、経営的に、現預金の絶対額が少なすぎた。
そのせいで資金繰りが無駄に忙しかったのだ。
ポールさんが示したような、大家のキャッシュポジションは、
総負債の5%~10%。
この基準は大いに参考になる。
ただ、私の妻の法人のような無借金会社の場合は、
年間家賃と同額程度、総資産の1割。
運転資金として持っておくと安定するだろう。

ちょっと大きめの修繕が入って、凹んでも大丈夫な水準がそこにある。
フルレバで投資を始めたばかりの時は、
どうしても負債の比率が大きくなる。
むしろ総資産より負債が多い状態。

それでもまあ、総負債の10%あれば、
当面は大丈夫。
私の当面の目標も、常時1,000万円のキャッシュポジションを維持することだ。
数か月前までは100万円。
これで死にかけた。
今は300万円。
余裕はあるが、少々不安になることがある。
やはり500→1000まで増やしておきたい。

逆にそれ以上はプールしておいても仕方がないから、
投資に振り向けていきたい。

さすがの私も300万→1,000万を1年で達成するのは厳しい。
PLだけで作るのは無理だ。
借入を併用しながら、達成する。
更に自己資金を減らさないのであれば、
投資も積極的にやっていく。

ただ、物件の満室稼働が先だ。
2つ空いているし、1つ大規模リフォームが控えている。
これらを片付けている間に2026年は終わる。

つづく