民営化すればいいというものではない

資本主義の分析

民営化は素晴らしいというのは嘘だ

自由、民営化と言うと手放しで評価する傾向が多いが、
これは大いに間違いだろう。

絶対に国家が担当しなければならない分野というものがあり、
特に発展途上国にあっては開発独裁の方が経済成長はしやすい傾向にある。
大体の発展途上国は先進国のカネを入れられて、
市場経済を導入して発展を遅らせられる。

ベトナムを植民地にしたフランスは、
橋を作ったが、通行料を徴収して稼いだという話もある。

特に分かりやすいのは
安全保障だろう。軍隊を民営化してしまったらどうなるのか?
金を払う人がいないと「いや、料金の支払がないので戦いません」
と、言うことも起きかねない。

警察も然り。
ホームレスが殺された!
でもホームレスはカネを払えないから‥‥。
と言って捜査されないというのでは困る。

消防もそう。

実際民営化されてしまったが、本来やってはいけなかったものがある。
水道の民営化というヤツもやってはいけない民営化だと思う。
これも生存に直結するものである。
実際外資規制も入れないままに民営化してしまったのは大いに問題だ。

また種苗法の改正というのもヤバい。
今は飽食の時代であるが、本来食の分野の根本であるから、
種は政府が強権とともに管理する必要があると思う。

それって国営化した方がいいんじゃないか?
という分野もある。
私は電力を挙げる。
クリーンエネルギーが叫ばれる中、二酸化炭素を排出しない原子力発電は、
民営化して良い分野ではないと思う。
電力がないとイマドキ何も始まらない。
民間企業の電力会社にやらせていいことではない。
これは震災でハッキリしたことでもあるが、
いまだに電力国営化の話は聞かない。

テロ対策ができていなかった!
と言って、東京電力を批判するのはいいが、
何かあった時に破産します~。
で、済むような話ではない。

オマケに電気が高いからと言って、
競争させて安くしようなんて
「頭がおかしいんじゃないか」
と、思う。
安くしようと思ったらコストを削らざるをえなくなり、
安全面が当然軽視される。

採算性を考えたら100年に1回のリスクに備えるために
多額のコストを払おうなんて気持ちはなくなる。
電力やガスは民営化にはなじまないので、国営化した方がいいと思う。

絶対に社内(自分)に残さなければいけないモノは何か?

翻って、私の商売(勤め人+大家)に考えを至らしめれば、
絶対に私が外注してはいけない分野というものがあるのではなかろうか。

どんな企業も、手放してはいけない分野というものがある。
カレー屋であれば、その秘伝のスパイスの配合であったり調理方法が挙げられる。
店舗は賃貸でよい。
スタッフはアルバイトでも派遣社員でも良い。
しかし、秘伝のスパイスの調合方法は絶対に外注してはならない。
カレーの製造をアウトソーシングしてしまっては、話にならない。

一方で、そのカレー屋の中核的競争力が、
効率的な店舗運営であればどうか?
カレーはソコソコの味であるが、超好立地に超高回転率で運営できるノウハウがあるとする。
この場合にはカレーは外注製造でも良いかもしれない。
しかし、こちらのカレー屋の場合にはスタッフの中でも社員となる人材は自前で抱え込む必要があるだろうし、店舗の設計ノウハウは決して手放してはいけないものになるだろう。

さて、私の場合はどうだろう。
勤め人としての私の特性は多分債権債務、担保不動産の法律知識と、
不良債権市場における人間関係が私の勤め人としての中核的競争力であろうと思う。
しかし、所詮は勤め人である。
法的知識は弁護士に劣るし、不良債権市場で働く人はたくさんいる。
結局は替えが効く存在に過ぎない。
替えが効く人間を雇えるのだから、代替性のある人間の給料程度しか、
私には支払われないだろう。
ここが限界だ。

そして、大家としての中核的競争力は何だろうか?
「投資判断能力」「資金調達力」だと思う。
私には卓越したリフォーム力もなければ、
掘り出し物件探索能力もない。
結局適切な投資判断と、資金調達だけは外注した瞬間終わってしまう。
不動産屋の営業マンに投資判断を任せた瞬間。
私は破滅する。
そもそも資金調達力がなければ物件を買えない。
その意味ではカネを引っ張れる財務体質を作っておくことは重要な経営者にしかできない仕事だ。

そう考えると投資家は楽だ。

絶対に奪われてはいけないものがある商品(ビジネス)と比較すると、
投資性が高い方が楽だ。
例えばJTの株を1億円分持っている投資家は、騙されない限り、
配当を年500万円得ることができる。
経営判断はJTの頭のいい経営者がやってくれる。

ポジションさえ持って黙っておけば配当が貰えるのだから。
JT株を売ってヤバい株に手を出さない力があれば良い。

不動産もこれに近い。
原則として同じものが2つないので、ある程度間違いのない立地に、
間違いのない物件を持って、適正賃料で回し、
間違いのない収支を組めば後は自動的に回る。

株よりは事業性が高いものの、運営にはそれほど高い能力は要しない。
オンリーワンな能力が求められないのである。
逆にオンリーワンの投資対象を見つけられる力だけあれば良いし、
オンリーワンの投資対象を見つけられる人が多数いたとしても、
多数が同時に勝つこともある。

勝者総取りの「商売」と比べればイージーゲームだ。

国家には手放すべきではない仕事がある。私にも手放してはいけないことがある。

国家で言えば国防、警察、水道、電力など。
私で言えば、まずは生活費を確保し、投資の原資を産み出す勤め人の給与。
これは手放せない。
さらに、勤め人卒業後も豊かに暮らすための不動産。
これも手放してはいけない。

民営化は素晴らしい!
という嘘で手放してはならないのと同じように。
勤め人卒業は素晴らしい!
という俗説に乗って、起業などやってはいけないのである。
仮想通貨の方が儲かる!
という嘘に乗って、不動産を売ってBITコインなど買ってはならぬ。

国家を詐欺る連中がいるように、
私も詐欺られる危険が常にあるのだ。

私は自分を知らねばならない。
「今、この会社で勤め人をしていることが、自分価値を最高値で売っている状態であることを」
「恐らく私には不動産以外に商品を作って独立する才覚はないことを」
「株の投資センスがなく、大家業以上に高収益で回せる投資はできないであろうことを」
身の程を知らねばならない。

身の程を知り、身の丈に合った今の幸せを守りつつ、
日々努力して少し上に行けるようチャレンジを続ける。

人は有能でなくてもカネと女と子孫繁栄を手に入れることはできる。
そう、ホワイト勤め人+貸家という手段によって。
私はこれしかないし、これしかやるつもりはない。
その上で日々面白く、誇り高く生きたい。

つづく