そっちには行きたくねぇという直感

働き方

天才上司君も稼ぎ頭営業マンも負けてここにいる

私は金融業界における、管理回収という分野をやっているが、
これは、積極的意思に基づいてやっている。
しかし動機においては「消極的な逃げ」で、ここにいる。

金融業界における花形というのは
法人営業、ストラクチャードファイナンスの分野だと思う。
(詳しくは知らんが)

そういう分野のエースが、銀行のトップになっている。
そもそも私は弁護士を目指していたのだが、
合格する頭がなかったから、諦めて勤め人になったのだ。

勤め人になってからも、外資系金融なぞに憧れたりしたものの、
彼らの頭の良さと長時間労働を見て、
これは勝てん。
と、勝負しないことを選択して、借金取りをやっていたのである。
金融分野の下の層でなら、上の層に行ける。
メジャーでは通用しないから、草野球でエースで4番をやるみたいなものだ。

勤め先のエース社員も、元勤め先の落ちこぼれである。
結局、本当の一流は、大企業で出世するか、
独立起業で会社をデカくする。

そうやって落ちこぼれを集めて、中小企業は営業されているのである。
私もあえて競争が激しい場所に行かないという選択の積み重ねでここにいる。
それでもちょっと厳しいところに足を踏み入れすぎたな。
という反省がある。

勤め先の天才上司君の担当分野は
公認会計士やら中小企業診断士、弁護士の、比較的パッとしないクラスが
糊口をしのぐために群がっている業界である。

私はこの分野の仕事が嫌である。
そもそも公認会計士にしても弁護士にしても、
再生やら借金取りは
成功者、天才がやる分野ではない。
中途半端に賢い連中が、再生ステージの中小企業と
出世コースから外れた銀行員と一緒になって、
手数料をコスってるような業界だ。

45にもなって、今更そういう連中と仲良くしても
いいことはないし、将来のプラン(独立自営)に全く合致しない。
エリートの落ちこぼれが集まっている分野に進むとそれはそれで競争があるから
さらに私はその分野の落ちこぼれになる。

私を含めてみな、大企業からの転職組というのは
落ちこぼれなのである。
どうせ戦うなら楽な業界・分野が良い。
私の次の勤め先があるとしたら、
ノンバンクやら、住宅ローンの延滞管理である。
そっちじゃないのだ。

やりたくねぇという直感

私は他人の会社の数字をこねくり回して、当たりもしない事業計画を分析するなんてことは
やりたくない。
大企業の決算数値であれば信用できるが、
中小企業の決算書など、当てにならん。
と、思っている。

トニカク、やりたくない。
この勤め人仕事に労働力を使うことが嫌だ。

この直感は正しい、過去にも不動産のセールスみたいなことをやらされた時も、
これはダメだと、3か月で完璧に理解した。
生保、証券、銀行の支店営業というのも、ダメだ。
成果が出ないことはないが、1日働いて疲弊する具合がデカすぎる。
それと似た感覚があるのだ。

結局「それなり」の分析結果を提出しても、
天才上司君には「足りない」と言われる。
足りないところを補完して提出すると、
今度は営業マンに「こんな数字じゃ相手に持っていけない、再考しろ」
と板挟みに会う。

天才上司君と営業が話をして決めてくれればいいのだが、
それもない。
こうして挟まれて、両手ではきかない数の社員が退職していった。
ここは鬼門である。

結局何でもソコソコこなすものだから、
天才上司君の分野に引っ張られてしまったのだ。
前の銀行子会社でも、回収しすぎて融資の営業を1年やらされたが、
全く同じ失敗をしてしまった。

根がマジメなものだから、一生懸命やって成果を出す。
すると、経営層はもっともっとと、仕事を押し付けるのだ。
そりゃそうだ。
労働力は払った給料で全部買い上げていると思っているのだから、
労働力が余っていると見たら、消化させ切るのが
資本主義のセオリーである。

ここが潮時かと思ったが

社長がそんな私を見て、天才上司君の業務からは外してくれた。
ありがたい。
10数年の私の実績を評価してくれたのだと思う。
まあ異動先にはさらに多くの作業がまっているのだが、
それでも、倒産ギリギリの中小企業の財務分析という、
死体の蘇生術を研究する仕事よりは、全然マシだ。
(そもそも死体は蘇生できない。むしろ死は必然なので受け入れる方がいい)

私の勤め人ゲームはここでクリアかと思ったが、
もうちびっとだけ続くことになったのだ。

をはり