私のオヤジの話をしよう
私のオヤジは農業高校を卒業してJAに入社した兼業農家だ。
兼業農家と言っても、祖父は7人兄弟の末っ子で、
シナ事変に従軍して無事に帰国し、
養子に入った水飲み百姓である。
つまり小作農家だ。
所有する田畑はゼロというところから出発した。
他人の土地を耕作してわずかな報酬を得ていたのだ。
その小作人の長男に生まれて、
農業高校を出て、JAに就職したのである。
大学に行くほど優秀でもなかったのだろうし、
そもそも大学に行かせるカネなどなかったのだ。
オヤジは私が物心ついてから、ずっと労働していた。
平日は勤め人、休日は自分の商売を育てて、
田んぼを買うという投資をしていたように思う。
オヤジがやった副業は
➀ 農家
② 牛の肥育
③ 林業
である。
バブルの頃は一通り株に手を出してヤラれたようだが、
致命傷にはなっていないらしい。
②に関しては牛肉オレンンジの輸入自由化のタイミングでやめてしまった。
明らかに採算割れしたかららしい。
農家と林業はいまだにやっている。
オヤジに遊びに連れて行ってもらった記憶はない。
休日は牛の世話と農作業、林業で働かされた記憶しかない。
遊びたいのに農作業、林業である。
ましてや、外食に行ったことも1度もない。
祖父はマジメだったが無能だったので、
オヤジの事業に黙って従事していた。
牛の肥育をやめたのは、祖父の老化に伴って
労働力の限界が来たというのが正直なところで、
オヤジが機を見るに敏だったとするのは誤りかもしれない。
オヤジはケチだったのだろうか。
子供を愛していなかったのだろうか?
それは違う。
事実、親父は私の教育費を全て、なんの不足もなく支払ったのである。
高校から一人暮らしをさせてくれたし、
大学も私立、東京に4年行かせてくれたのである。
無論兄にも同様に支払ったし、
弟にも同様に支払ったのである。
借金をすることもなく、何の不満も言うことなく支払った。
これだけで親父にはいくら感謝してもし足りない程である。
遊びに連れて行ってもらえなかったことや、
外食がなかったことなど、全く気にならない。
自分が同じ立場になって、教育費を3人分支払うことのキツさが分かるようになった。
私はついつい、誰のおかげでメシが食えているのか?
ということを口に出してしまうが、
オヤジはそんな言葉は1度も吐いたことがない。
(実際のところは、祖父も、祖母も、母も働いていたからかもしれんが)
オヤジは息子を愛していなかったのだろうか?
それはない。
愛とは見返りを求めずに支払うと言うことである。
命、時間、カネを払うと言うことだ。
息子とキャッチボールをしたり旅行にカネを使うが、
教育費が出せないから奨学金を借りてくれというのは
本末転倒である。
カネの支払いとは愛情そのものである。
では風俗嬢への支払いも愛なのかというと、
愛なのかもしれん。
ただし1時間なり2時間限定かもしれん。
親父が金持ちになることは旅行より大切だ
父親が金持ちになって、将来の教育費負担に楽勝で耐えられる。
将来の結婚、孫育児にも積極的支援ができるようになる。
これは極めて重要である。
家族との思い出作りも大いに結構だが、
それをカネをかけるという方法で行う必要は全くない。
むしろ、日常の食卓、会話が大切である。
金を使わなければ家族サービスできないと言うのはおかしな話だ。
そもそも家族サービスがあるなら、父親サービスもあるべきだろうが、
それはない。
そもそも毎日カネを稼いで家族の生活を支える以上の家族サービスがあるのか?
いや、ない。
むしろ出血大サービスだ。
そんなわけで、私は家族を連れて旅行などしない。
理由は私は観光地に子供を連れて行くのが大いに、大いにストレスなのだ。
成熟した大人であれば一緒に行ってもいい。
各自自由行動、行きたい場所が同じであれば一緒に行動。
返りたければ先に2泊で帰るもよし。
長居したければ1週間一人でいるもよし。
そういうオトナになったら、息子達と旅行に行くのもやぶさかではない。
そして、私はオトナになった息子達と旅行し、
その旅行費用を負担するだけの財力を蓄えようとしているのだ。
金を稼ぎ、家族の生活を支えること。
さらに資本を拡大して、一族の生活の保険となるような存在となること。
これが男の生きざまであり、まさに大黒柱だと思うのである。
金を稼いだうえに家族から愛されたい?
大事なことだが、
愛されるかどうかは、父親がどうこうする問題ではない。
父親が愛することはできるが、
父親が愛されようとすることもできるが、
実際に父親を愛するかどうかは、妻の問題であり、子供の問題だ。
父親が愛を強制することはできない。
それはむしろ虐待である。
愛を求めて旅行やモノを買ってやるのは、媚び、へつらいである。
そんなもので愛情が買えるわけがないのだ。
俺は家族が旅行に行きたいと言うなら行けばいいと思う。
多少のカネの支援はできる身分になったが、
私が連れいて行って、旅行代理店の添乗員みたいなマネをする気はない。
運転手をする気もない。
残念だが、それは私の仕事じゃない。
私は行きたい場所に行く。行きたくない場所には行かない。
貴様ら家族に媚びるつもりはない。
出て行けと言うなら出ていく。
支配もしないが、支配されたくもない。
優先順位は家族の生活費を稼ぐ。
次に一族繁栄の礎となるような財産基盤を構築する。
その次に私の心身の健康である。
それが満たされた後に、家族サービスなのだ。
優先順位としては再劣後なのが家族サービスである。
そもそも私は人と一緒に行動するのが嫌いである。
例え家族と言えども例外ではない。
気分が良ければ誘ってやる。
その程度だ。
俺は家族を愛しているし、不自由ない生活をさせてやることまではする。
しかし、愛情を強制はしない。
愛情を求めて奉仕などしない。
家族に愛されなければ愛さないと言うのは愛ではない。
家族に嫌われたとしても一向に構わない。
俺は俺のやり方で父親をするという覚悟なのである。
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