利回りは指標に過ぎないのだ

不動産全般の話

利回り18%と8%

利回りの逆数(かけると1になる数)は投資金額を回収できるまでに必要な年数を示す。
20%の逆数は5だ。
要するに100分の20には20分の100を掛ければいい。
つまり5だ

18%の利回りということは18/100であり、逆数は100/18、5.55555である。
5年半ってところだ。
1,000万円投資して年180万円の収益だから、5年半で1,000万円の投資金額を回収できる。
とまあそんな数字だ。

利回りってのはその尺度に過ぎない。
だから利回り80%、100%と言っても、
投資元本がいくらかが重要になる。

100万円の5%で20年だと年5万だ
1億円の5%だと500万
当たり前だが、同じ5%でも投資元本の多寡によって生み出される絶対的な金額の違いは
大いに異なる意味がある。

100万円は誰でも持っている(または持つことが可能な額である)
しかし1億円は難しいだろう。

5万円は毎月でも稼ぐことはたやすい。
しかし500万円では年収である。

500万円あれば、人ひとりを1日8時間、240日程度労働させることも可能だ。
1人の人間を労働の苦役から解放できるのだ。

つまり投資元本を増加させることは高利回りで運用することよりも重要なのだ。
種銭がなければそもそも始まらないが、
投資元本を増額することの方が大事なのだ。

100万円の戸建を買って、300万円でリフォームする。
総額400万円で、18%であれば月の家賃は6万円だ。

しかしだな、
1億円の8%だと年収800万円である。
月の家賃は70万円弱である。
これに30年のローンを当てられれば返済額を35万円としても
30万円以上手残りが生じる。

18%の投資か?
8%の投資か?

利回りだけを見ていたら本当に重要なことを見失う。
本当に重要なことは利回りではない。
投資元本の大きさ、キャッシュフロー、長期かつ安定的に回転し続けられる仕組みか?
それが重要だ。

とはいえ利回りは重要である

なぜ重要なのかと言えば、
モノサシ📐として重要だからである。

利回り5%の物件で探す投資家がいるかと思えば
利回り10%以上で探す投資家もいる。
30%以上なければ、というDIYerもいる。

彼らは投資目的が全く異なるのである。

5%の物件を探している投資家はおそらくキャッシュが有り余っている。
10億円の資産を3億円の現預金、株式で3億、残り4億は不動産にしようと思っているか
相続対策かもしれない。
5%の投資家は事業を別にやっており、年収は1億円である。
このような投資家は資産の保全、安定性、税制の活用を狙っている。
だから4億円5%の不動産を探しているし、1,000万円の取引を40回もやりたいとは思わない。その時間は本業に充てたい。

10%の投資家はサラリーマン大家だ。
給与はある。
しかし、老後を見据えると利回り10%の物件を持って、運用しつつ、
定年までに2億円、10%の物件を持ち、ローンも退職金で完済できる。
そんなプランを持っている。

30%以上を目指している投資家は、
独立起業を狙っている。
10%で10年かけて投資元本を回収するのでは、
時間がかかってしょうがないし、
サラリー収入がないから、生活費も賄えない。
30%が最低必要なのである。
なぜならばそれが「本業」だから。

このように投資家がそれぞれの目線(ものさし)を持って物件をスクリーニングする。
投資対象を1つ決定するまでに、
100では少ない。1000の物件に目を通すのだが、
その目を通していく際の、書類選考(オーディション)のために、
モノサシがないと効率的に数を処理できない。

1件1件シミュレーションをしてもしょうがないのである。
だから、物件の価格、利回りという指標として重要だ。

私は10%の投資家である。
30%を出すためには仕入れルートも工夫しなければならないし、
リフォームコストを自力でやることで抑えなければならない。

勤め人大家にはそれは無理なので、10%なのだ。

大量の候補者を選抜するために、利回りは重要なのだ。
そもそも、DIYERが10%の物件を買っていたら採算に合わん。

ゴールを決める、所要時間を逆算する

無目的に資産を増加させるのはおすすめできない。
これが目的になると、無間地獄に落ちる。
本来他人である他の投資家と比較するという、
馬鹿をやってしまう。

投資するには目的があるはずだ。
それを明確にして目的達成に集中しよう。

私の場合には年収1000万円という目標があった。
サラリーで500万円、不動産で500万円の家賃収入。
28歳でスタートして、32歳ごろ達成した。
サラリーで700万円、家賃で300万円を突破した。
10年かける予定だったが前倒しされた。

32歳からの目標は年収2000万円だった。
これは勤め人を辞められるだけの不動産家賃収入という目標だった。
これは36歳ごろには達成していた。

しかし、主に給与で達成してしまっていたので、
ここからは不動産単体での目標に切り替えた。

37歳からは不動産キャッシュフローで月100万円が目標だが、
まだこれには達していない。
今はせいぜい18号物件が稼働しても70万円には届かない。
ローンの返済が終わってやっと月100万円といったところだから、
あと3年はかかるだろう。
妻が予想外に不動産を相続したので、世帯という単位では到達しているが、
嫁の財布に手を突っ込むような下品なことはしたくない。

子供も小さいし、親もいつ半身不随になるかわからない。
月100万円を自分ひとりで達成するのが当面の目標だ。
今月70万円なので、年1~2件程度増やしていけば、3年もあれば月100万円(単体)は可能だろう。
このようにゴールを決めて、所要時間を決めて具体的に走るとよい。
それがないと、そもそも自分がどこに向かって、何のために、いつまで走っているのか分からなくなる。

実は私も似たようなところがあって
そもそもサラリーマンを卒業するために月100万円を目指したのだが、
サラリーマンを卒業して何がやりたいのか?

これが全くないことに気が付いてしまった。
何かやりたいことがあるのであれば辞めてもいいが、
勤め人も楽しいし、定年まではやってもいいかなと思っている。

こうなるとスピードを上げる動機がなくなってしまう。
おそらく48歳までには月100万円は達成するだろうが、
次の目標は200万円にするだろう。
そうやって定年になったら、家賃+自分の小さなビジネスをやって、
自分の会社で自分を勤め人として採用して生きるのだと思う。

利回りよりも重要なこと

株でも不動産でも、勤め人でも構わないが、
なぜ、それをやるのか?
つまり動機が重要だ。

その動機、目標を明確にしよう。
その動機を生み出した目標を達成するための、モノサシ、それが利回りなのだ。

勤め人卒業なのか、老後資金なのか、教育費か?

勤め人で年収2,000万円あり、その仕事が楽しいのであれば、
別に不動産をする必要もなかろうと思う。
年500万円は貯金できるだろうから、それを手堅く保全しておいて、
老後はそれを取り崩して生きたらいいのである。

しかし、自分のやりたい業界の給与水準が500万円/年だから、
必要な年収1,000万円のギャップ500万円を埋めたい。
だから、10%、5000万円のアパートを2つ買う。
など、具体的な必要性、目的を定めたら、あとは増やす必要もない。

増やす必要もないのだが、資本はそれ自体が意思があるように自己増殖を始める。
放っておいても勝手に増えていく。
それ自体を自分ひとりの人間の能力だと勘違いして、
人は愚かな行動をしてしまうものだ。

愚かなことをしないためにも、
あえて拡大にブレーキをかけて、目標を自己資本比率、債務償還年数、
返済比率など、別の目標数値に置き換えるのもいいアイデアだ。

数字に振り回されるのはやめよう。
数字は利用するものであって、コントロールするものだ。
利用されたり、コントロールされないように気を付けようじゃないか。

をはり