取引先の銀行員との会食だ
彼はまだ34歳だ。
今回、人事考課があったらしい。
ここまでは同期最速で昇進していたのに、
今回初めて一歩遅れを取ったということで、
本人曰く落ち込んでいるそうだ。
私に言わせてしまうと、
くだらないオモチャの勲章が昇進ってヤツだ。
そうストレートに言ってしまうと角が立つから、
遠回しに言った。
「その出世レースは最後99%が負ける側に回るのだが、それでもやる価値はあるものですか?」
と。
銀行員ってのは同期最速の役員が出たら、そこでゲームは終わり。
その他の同期はもう役員の目はないらしい。
知らんけど。
それでもやるんだ。
と、言っていた。
この狭い世界が私にとっては全てで、それに全力を尽くす以外にやることもない。
と。
なるほど。
そこまで言うなら止めはしない。
言わなくても止められないが。
そんな生き方もあるのかもしれない。
私も地元岩手の岩手銀行にでも就職したら、
出世ゲームを頑張ったかもしれん。
大家業や副業なんて思いもつかず、
出世競争にまい進していたかもしれない。
岩手が嫌で東京に出たから、
東京のメガバンクってヤツに就職してもしばらくはそのゲームに興じていただろう。
34歳なら、別の世界線の私はしっかり勤め人競争をやっていたに違いあるまい。
彼の年収は800~900万くらいだろう。
私が34歳の時には既に大台に乗っていたというか、
不動産も合わせれば2,000万に迫る勢いだった。
カネはないらしい。
一応取引先でもあるから、
自腹ではあるが、全額払うようにしている。
まあ年下でもあるし、
勤め先の重要取引先である。
ただ、自腹なので、安い店で払う。
別にどうってことない。
2人で3時間くらい飲んで10,000円の安い居酒屋だ。
私ならその程度のカネを払ってもらって
恩に着せられても割に合わんので、
逆に全部払いたくなる金額だが、
それが出来ない程、彼は財務がタイトだ。
まあ、年収1本行ってなくて、
嫁は専業主婦で、地元から出向してきていて、
東京での生活費もあるので、
カツカツらしい。
そんな苦汁を舐めながら、
出世競争ゲームをやる価値があるのだろうか?
さすがに、別の世界線の私でも、家を買って、子供が出来て、
年収1本に届かない状況に至ったら、気づくと思う。
27歳独身400万の年収の時に私は気づいた。
こ、このまま生きていたら、
勤め先の50代の連中みたいなしみったれた人生になるぞ。と。
彼は毎月5万も貯金できていないらしい。
まあ単身赴任中という言い訳もあろうが。
別に大家+勤め人のいわゆる「こっち側」に来て欲しいわけでもないが、
その人生をやりたいと思うのは人それぞれだ。
まあいいだろう。
彼が同期最速で出世できない理由
勤め人の出世ゲームに賭けると言う割には、低学歴である。
高学歴とは早慶旧帝大以上を指すが、
その枠には入らない。
そんなに出世ゲームが好きなら、
普通の大学くらい出ておけよと思うが、
まあそれは個々の生まれ持っての才能次第だから、良いとしても。
せめて学歴が低いのだから、通信のMBAでも取ったりして
「ハク」でも付ければいいだろうし、
資格も取ったらいい(そういえば税理士をコツコツ受けていると言っていたような気もする)。
出世できない理由は、もうわかり切っている。
敵を作る性格だ。
これでは組織で動く銀行員としては上にあげられない。
普通に生きているだけで敵を作るタイプである。
仕事は大いにできるのだろう。
しかしだな。
地方の銀行員という肩書があれば、大体誰もが話を聞いてくれるし、
そのエリアで金利も一番安いのだろうから、
借りたい人さえ適切に見つければカネは貸せるだろうし、
金融商品も売れる。
数字なんてやって当たり前である。
それをやったうえで、その進め方が問われる。
上司に断りなくドンドン数字を稼ぐのもマズイ。
分かり切ったことも確認をして、その上で成果を出して、
「〇〇部長のご指導のおかげっス、チッス」
という可愛げを出さないといけない。
部下でもいたら、
敢えてそいつに手柄を取らせて、
一杯おごってやるような器量は、残念ながら彼にはない。
素直にハイということがない。
歳上の私にもこの調子だと、もっと上の役員クラスから見ると、
何だこのガキ。ということになるだろう。
そりゃあ出世も遅れる。
30代も半ばになれば、
数字よりも、大事なことは、リーダーシップである。
これが出来ないと負けが確定だ。
ご愁傷様である。
をはり